3 ブロックの抵抗
抵抗とは?
ブロックの抵抗とは、『潜在意識がブロックが外れることを恐れ、内観の妨害をすること』を言います。
人間は、本能的に『未知のエリアに行ってはいけない、安全圏から出てはいけない』という強い刷り込みを持っている生き物です。
今と違う場所に行こうとすると「未知の場所に行ったらどんな危険があるかわからない。今の環境で生き延びてきた実績があるんだから、多少居心地が悪くても、ずっとここにいたい」と本能が強く自分を引き留めるのですね。
内観に限らず、潜在意識というものは実は非常に変化を恐れるようにできています。
例えば、「ダイエットしてもリバウンドしてしまった」「新しいことをやろうと思ったけど3日坊主になってしまった」という経験はないでしょうか?
人間の体や精神には「ホメオスタシス」という、内部環境を一定の状態に保ちつづけようとする働きがあるのです。
この抵抗は、非常に巧妙で、また自分の理解よりもはるかに深いレベルまで及んでいます。ですが、傾向と対策を抑えることで負担が格段に少なくなります。内観をする場合は、「抵抗」に関する知識をきちんと身に着けてから行いましょう。
抵抗に対するときの心構え
まず細かい話をする前に、抵抗に対するときの心構えを3つ、知っておいていただきたいと思います。
まず「①根性で戦わないこと」。
つい、根性や気合やモチベーションで何とか乗り越えようとしてしまうのが私たち人間ですが、それだとブロックの思う壺です。なぜかというとエネルギーをかけるほど、そこで消耗させることができるからで、消耗させればさせるほど『こんなに大変なら、もうあきらめよう』と挫折させることができるからです。内観の際は、なるべく余計な力は入れずフラットに、考え方をスイッチするつもりで臨みましょう。
続いて「②仕組みを理解して、『工夫』で対応すること」。
抵抗には逆らうのではなく、仕組みを知ったうえで、無理のない振舞い方をする、ということを心がけましょう。真っ向から戦うというよりは、合気道のように受け流すようなつもりでいるのが望ましいです。また、ブロックはエネルギーが大きいため、その力を上手に利用しながら進んでいくのもよいでしょう。また、人によって、ブロックの抵抗の「癖」があります。ですから、そのあたりも把握すれば、よりスムーズに進みやすいです。
最後に「③目先の感情や恐怖の一歩先を見ること」。
詳しくは次項で解説しますが、内観をしていると不安や恐怖やネガティブ感情が湧いてくることが非常によくあります。ですが、それは「ブロックが先に進ませないようにと、脅かしているだけ」の虚構の感情ですので、飲まれ過ぎないようにしてください。
また、ブロックの抵抗の一つに「感情を反転して知覚させる」というものがあります。たとえば『大嫌い』と感じているものが『本当は大好き』、『絶対にしたくない』と感じているけれど、『実際はやりたくてたまらない』という感じです。
ですから、自分が持った感情や恐怖に対しては、真剣に受け止めすぎないこと。そして、「本当にこれは自分の感情なのか?ブロックに脅かされているだけでは?あるいは逆なのでは?」という視点を持つことが非常に大切です。
ブロックの抵抗あれこれ
それでは、ブロックが具体的にどんな抵抗をするのかの例を見ていきましょう。
①死角に入る:自分からは見えない
これはブロックの最大にしてオーソドックスな抵抗です。あなたの身近にも「あの人、この話題に関してはすごく感情的になるけど、本人は全く自覚はないんだよね」というような人はいませんか?
ブロックは、本人の「当たり前」に潜んでいますので、そもそも、自分ではそれがおかしいことであるとは認知していません。例えば「親の言うことには絶対に逆らってはいけない」というブロックを持っている人は、そもそも「親の言うことに逆らう」という発想自体がなく、そこに選択の余地がありません。ですので、ブロックを見つけるには「自分の当たり前を疑うこと」が必要になってきます。
②物量作戦:たくさんあって諦めようとさせる
ブロックは簡単に外れてしまっては困るため、似たようなブロックをたくさん作ります。
例えば、「お金を稼ぐのが怖い」というブロックなら「お金持ちになると嫌われる」「お金は汚い」「たくさんのお金を持つといいことがない」「お金持ちになることは誰かから奪うことだ」というように、似たような仲間のブロックをたくさん作ることで、一つや二つが外れても問題がないようにしているのです。
これに関しては、根本的な対策は難しいのですが、まずは「必要なところを地道にコツコツ外していくこと」。一つ二つでもブロックが外れれば確実に、自分が抱えている制限は小さくなっていると自覚することです。先を焦らずその時必要だと思ったものを、着実に手放していきましょう。
また、「感情の感じ切り(詳細はこちらを参照)をしっかりやる」というのもとても効果的です。たいていのブロックは「そのままの自分では愛されない」というところに根付いていますので、恐怖や孤独感、無力感や不安感などをしっかりと消化できれば、自ずとそこに紐づいているブロックも消化されていくからです。
③反転:本来の感情を逆転させる
これは前項でも少し触れましたが、たとえば「大嫌い→本当は大好き」、「絶対にしたくない→やりたくてたまらない」という感じで、本来の感情の逆であるかのように見せかけるものです。
引く戸をいくら押しても開かないように、反転している感情は正しいベクトルで認知しなければ、先へは進めません。ですから何か強い感情が出てきたら「逆じゃないかな?」と疑ってみてください。
<コラム>好きは嫌い
「好き」の反対は「嫌い」。そう思っている方も多いかもしれませんが、実はエネルギーの世界は「好きは嫌いの裏返し」という観点で見ます。つまり「好きが100」と「嫌い100」は同じ「100のエネルギーをどっちに向けているかというだけ」だということなのです。
例えば、嫌い100は、「好きなものを粗末にされたから」とか「好きだったのに期待を裏切られたから」などというように、必ず理由の中になにかしらの「好き」の要素が隠れているもの。
「ポジティブ感情は愛で、ネガティブ感情は否定」だという感覚の方も多いかもしれません。ですが、ネガティブ感情も実は、自分を守るために生まれたり、好きをないがしろにされたから生まれたもの。本当に興味がない、自分に必要がないのであれば、そもそもエネルギーをかけないはず。ですから、エネルギーが1でも発生していれば、それはもう「愛」なのです。
また、ポジティブ感情には必ずネガティブ感情も伴います。例えば、好きであればあるほど「大切にしようとするから手間がかかって面倒くさい」「失うのが怖い」「ちょっとのことで傷ついてしまう」という側面もあるもの。
ですから、ブロックの手放しの観点でも、この感覚を持っておくとスムーズです。「大切だからこそ、許せない気持ちが大きい」「執着が大きいほど、実は寛容さの表れ」というように、ネガティブだけフォーカスせず両面から見ることができると、必要以上に自分を否定したり、攻撃したりする必要がなくなるかもしれません。
④感情を乱す:怒り、不安、パニック、過剰に恐怖や不安を感じる
あなたの身の回りにも、「あの人、この話題になると急に感情的になるよね」とか「悪意なく言ったつもりなのに、相手が過敏に反応してしまった」ということはないでしょうか。実はこれもブロックの抵抗によるものです。
また、内観をしていると、ザワザワと不快な感覚に襲われたり、不安になったり、腹が立ってどうしようもなくなったりと、自分の意思をコントロールすることが難しくなったりもします。感情を大きく乱されると人は、「相手を攻撃しよう」としたり、あるいは「不快だからこの感情から一刻も早く逃げよう」とするため、「自分と向き合うことから避けようとするのです。
⑤思考機能を低下させる
ブロックを突き付けられたときに、眠くなる、ぼうっとする、動揺する、フリーズする、急に頭が働かなくなる…という体験は内観をした人はほぼ全員が体験するものです。
この2つの対応策としては、「感情が乱れた時や頭が働かないときには、意識的に『ブロックが暴れてるんだな』『ということはブロックの核心に近づいているんだな』と考えて、吞まれないようにする」というのが効果的です。これには少し慣れが必要になってきますが、目の前の感情が『ブロックによって思い込まされているだけ』という感覚が持てるようになるとよいですね。
⑥邪魔する:家族などの第三者が物理的な妨害をする
これは体験した方はみな一様に驚かれるのですが、「ブロックと向き合おうと、子供が熱を出した」とか「内観の佳境に入ったら、親から電話がかかってきた」などということが起こることがあります。他の人や周囲のことに気を取られれば、自分と向き合わずに済むようになるからです。
第三者から介入された時に『自分が起こしている抵抗』という感覚は持ちにくいのですが、実は、『この世のことは自分の潜在意識が作り出している』という前提から考えると、『自分が向き合いたくない→誰かが邪魔する役をしてくれる』というのは自然なことでもあるのです。
これに関しての対応策としても、「ブロックの抵抗ではないかと意識する」ということがまず大切です。「これはブロックの抵抗だ」と自覚できただけで「抵抗の力が緩む」ということも多々あります。最初のうちは、内観をしているときに起こる妨げや不快になったりする現象はすべて「抵抗ではないか」と疑う姿勢を持つくらいでちょうどいいと思います。また、「しっかりと向き合いたいときにはひとりの時間を確保して行う」ということが有効です。
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また、この他にもブロックの抵抗は「外れたと見せかけて、実は外れていない」「一旦外れたけど、その後同じブロックができる」「向き合う必要がないと思わせる」「終わってないのに終わった等と思い込ませる」「本人は向き合っているつもりだけど、実質的にやれていない(いろんなブロックに手を付けてはすぐやめる等)」…などなどいろいろなパターンがあります。
結局は「自分がどうしたいか」
ブロックの抵抗は非常に巧妙で高度なものもあるため、疑っていくとキリがないし、何が本当かわからなくなってくることもあるかもしれません。また、ブロックの抵抗は苦痛を伴う(ように見せかける)ものが多いため、この妨害によって向き合えなくなるという方もかなり多いです。
しかしここで大切なのは「自分が長い目で見てどうありたいか」。
5年10年先の自分はどうありたいか、自分が自分を好きになるためには、今このブロックをどうするべきなのか。それを考えたうえで、もし今がそれに対応する時だと思えるのなら、対策に気を付けながら、しっかりと向き合っていただければと思います。
また、向き合っているときには非常に不快であったり、「どんな醜いものが出てくるのだろう」と恐ろしくなることも多いのですが、一度ブロックを外してしまえば、けろっと、「あれ、こんなもんだったっけ」という感覚になることが多いです。これも、ブロックの中に閉じ込められていたネガティブ感情が消化されたことによります。
ブロックは「近づくほど必要以上に脅かしてくるけど、実体はないんだ」という感覚を持っていただけるのもいいでしょう。
▼抵抗と対策のまとめ
抵抗 | 対策 |
① 死角に入る:自分からは見えない
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・当たり前を疑う
・やみくもに行わず、具体的な出来事から掘り下げる ・誰かと一緒に行う |
②物量作戦:たくさんあって諦めようとさせる | ・必要なところを地道にコツコツ外していく
・感情の感じ切りをしっかりと行う |
③反転:本来の感情を逆転させる
|
・大きな感情が出てきたら「逆ではないか」と疑う |
④感情を乱す:怒り、不安、パニック、過剰に恐怖や不安を感じる
⑤思考機能を低下させる:眠くなる、ぼうっとする、動揺する、フリーズする |
・「ブロックの抵抗だ」と意識する
・これが出てきたということは「佳境に入ってきたということだ」と理解する |
⑥邪魔する:家族などの第三者が物理的な妨害をする | ・「ブロックの抵抗だ」と意識する
・しっかりと環境と時間を確保して行う |